Hearthstone環境考察

使用率をまとめたり環境予測をしたりします。Hearthstoneに関連するトピックをゲーム理論や統計学の視点から取り上げ…たりもできればいいですね…

Vicious Syndicateの週刊レポートの指標がよくわからなかったので平易にまとめる話

私はゴリラです。日本出身です。

日本出身のゴリラなので、英語と図表を読むのが苦手です。

日本出身のゴリラにとって、vSの公開している記事を一瞬で理解するのはとても難しいことでした。

そのため、私のような苦労をする日本出身のゴリラを少しでも減らせないかと考え、この記事を執筆することを決意しました。

 

 

※わからなかったので頑張って計算した内容がだいたいFAQに掲載されていたので、計算要素はありません。

www.vicioussyndicate.com

※これから書くことのほとんどは説明を読めば分かる自明なことです。

※本文中で使用しているスクリーンショットはvS Data Reaper Report #93のものを使用しました。

www.vicioussyndicate.com

 

 

vSが週に一回更新しているData Reaper Reportの記事を開くと、5つの図表が表示されます。

 

まず1番上にあるのはデッキの割合です。これはわかります。

 

2番目にあるのはクラスごとの割合を時系列順にまとめたものです。これもわかります。

 

3番目にあるのはマッチアップ毎の勝率です。見辛いですがこれもわかります。

 

4番目。

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5番目。

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4番目以降、よくわからない指標が出てきたので、FAQを参照します。

まずデッキのすぐ右にある"vS Deck Power"です。

We calculate a deck’s Power Ranking score by weighting its matchups against other archetypes, factoring each archetype’s frequency.

これは理論上の勝率*1を示しています。

実際に集められたデータ上での勝率ではないということですが、これを勝率の指数と見なすのは妥当だと思います*2

 

 

次に"Power Score"についてです。

1. We take the highest win rate recorded by a current archetype in a specific rank group, and set it to a fixed value of 100. We then determine the fixed value of 0 by deducting the highest win rate from 100%. 

 要するに、「勝率の数字を加工して、最も勝率の高いデッキのスコアが100になるようにしたもの」ということです。

また、勝率が1-(最も高いデッキの勝率)になるデッキのスコアが0になるように設定されています。#93の例で言えば、勝率54.12%のEven Warlockのスコアが100なので、勝率45.88%のデッキが存在するならばそのデッキのスコアが0になるように調整されています。

このスコアは負の値も取ります。vS曰く、スコアが正の値をとるものが“viable” decksであると解釈しているそうです。

 

このスコアに関して注意したい点がいくつかあります。

 

①勝率50%のデッキのスコアは必ず50になる

 勝率50%を境に範囲が等しくなる設定なので、どんな時もこれは成り立ちます。

②基準点は0ではない

 つまり、「スコア60のデッキだからスコア30のデッキの倍すごい」というような計算はできないということです。

③違う週同士の比較はできない

 このスコアはあくまで相対的なものなので、例えば先週80点のデッキが今週75点だったとしても、それだけでそのデッキが弱体化したという意味にはならない、ということです*3

 

一方で、本質的なスコアの意味は勝率と何ら変わりありません。ただの見やすい勝率です。

 

 

次に"Freq Score"です。

We take the highest frequency recorded by a current archetype in a specific rank group, and set it to a fixed value of 100. The fixed value of 0 will then always be 0% popularity. 

 つまり「割合の数字を加工して、最も多いデッキのスコアが100になるようにしたもの」ということです。

#93の例では、最も多いShudderwock Sharmanのスコアが100で、スコアが74のEven Warlockの割合はShudderwock Sharmanの74%である、ということです。

 

この指標に関しては、最低値が0であり、スコアが60のデッキはスコアが30のデッキの倍多いことになります。一方で、違う週同士の比較ができない点は同様で、前週より増えたデッキのスコアが下がることもありえます。

 

また、これもPower Scoreと同様、本質的なスコアの意味は人口と何ら変わりありません。ただの見やすい人口です。

 

 

最後に、"Meta Score"です。

We calculate the simple average of a deck’s Power Score and Frequency Score to find its vS Meta Score

 

いや平均かい笑

 

 

これらの指標を理解できたので、5つ目の散布図も理解できるはずです。

スクリーンショットを再掲します。

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横軸が見やすい勝率、縦軸が見やすい人口です。右に行けば行くほど強いデッキで、上に行けば行くほど多いデッキです。

散布図の左上の方にあるデッキは「多いが勝率が低いデッキ」です。「カモられている」ということです。一方散布図の右下にあるデッキは、「少ないが勝率の高いデッキ」です。「メタの合間を縫って勝率を稼いでいる」ということです。

 

 

で結局これを見て何が嬉しいのか、私にはよくわかりませんでした。FAQを参照したところメリットが3点書かれていました。

1. The vS Meta Score allows us to rank decks along the two dimensions that determine their influence on the meta, and display these decks in one chart.

 一目で割合と勝率が確認できるということです。確かにそうですね。ありがとうございます。

2. This makes deck trends more visually appealing and easier for the reader, against the alternative of flipping between power rankings and frequency charts. By looking at the vS Meta Score plot, we can immediately understand the characteristics of a specific deck. For example, a deck carrying a relatively low power score and a high frequency score is likely to be targeted by the field

 上で少し触れたような、カモられているデッキやメタの合間を縫っているデッキを一目で確認できるということです。これも確かにそうですね。 感謝します。

3. The vS Meta Score plot also allows us to evaluate the health of the meta. The presence of an oppressive deck will push all other archetypes towards (0,0), while a balanced meta will push multiple archetypes towards (100,100). How decks scatter within the plot tells us a lot about the state of the game. 

  要約すると、全盛期の翡翠ドルイドは不健全、ということが書かれています。確かにそれも理解できますね。お主に敬意を。

 

ここで一つ問題が。

1ページ割いてまでvSはMeta Scoreがいかにありがたいかを語ってくれていますが、4枚目の図表は勝率順のTierによって区切られているため、Meta Score順のソートができないというお笑いのような状況が発生しています。

これは困るので、5枚目の散布図を使ってざっくりとMeta Score順のソートをします。

 

表を45度傾けます

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②上から順にメタスコアの高いデッキが並んでいます。よろしくお願いします。

 

 

 

ここから私見です。

伝えたい内容はこの一文に集約されています。

 

このReportは「こうだった」という事実の「記述」であり、「こうあるべき」という「規範」ではない

 

つまり、Reportはこちらのとるべき行動を示唆するものではないということです。

 

メタスコアを見て、どういう行動をとりますか。

 

「流行っているデッキを使おう」とする人もいるでしょう。良い判断です。ですが、流行っている理由によってはそれは最適でなくなります。安いから、速いから、有名プレイヤーが上位到達したからという理由で流行っているデッキが、必ずしもTier1とは限りません。

「一番勝率の高いデッキを使おう」「勝率が高いけどあまり使われていないデッキを使おう」という判断も当然正しいです。ですがこれも、他のプレイヤーが大勢同じことを考え始めた時、それを使うのが最善ではない可能性が出てきます。

「次流行りそうなデッキに有利なデッキを使おう」という判断も正しいですが、そこまでの情報をこのReportは提供していません。

 

確かにMeta Scoreが最も高いデッキは"Best"であることに違いありません。ですがそれを"Best to use"と捉えることはできないと思います。

これは何もvSのReportに限ったことではありません。HSReplayのデータも、それはあくまでありのままの事実を記述しただけで、それ以上の情報をもたらすものではありません。

 

つまり、我々は未だ、最適なデッキ選択に関する規範的な理論を持っていないということです。

 

 

 

だから、あったらいいなぁ。作れたらいいなぁ。

 

 

 

と思うゴリラであった。

 

 

 

 

最後に、6月14日現在Tempo StormのMeta SnapshotでTier1とされているデッキ*4のMeta Scoreに絞った表を貼り付けて、記事の終わりにしたいと思います。

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*1:各デッキの存在割合にマッチ毎の勝率を掛けて足したもの。

*2:大数の法則より、集められたデータが十分大きければ、データ上の勝率と理論上の勝率の差は0に収束します。

*3:前週より勝率は上がったがスコアは下がった、という状況が発生する可能性があります。逆も当然あります

*4:Tempo Stormの定義するTier1は、”Well-optimized decks with extremely efficient and overwhelmingly powerful combos and card synergies that makes losing against these decks feel helpless and unfair.”です。