Hearthstone環境考察

使用率をまとめたり環境予測をしたりします。Hearthstoneに関連するトピックをゲーム理論や統計学の視点から取り上げ…たりもできればいいですね…

12月後半~1月のデッキ使用率変遷と環境予測振り返り

①デッキ使用率変遷

概要

ナーフ実施後の12月21日~1月31日までのデッキ別の使用率をまとめたのでスプレッドシートとして公開します。
docs.google.com

備考

・データはHSReplay.netが公開しているものを集計しました。
hsreplay.net
・「レジェンド~ランク5」の「過去1日」の人口を、毎日20時頃に集計しました。技術的な問題で集計時間が大きくずれることがあるので、完全に正確なデータを集められたわけではないと思います。参考までに。
・1ページ目が推移のグラフです。横軸が日付、縦軸が割合を示しています。グラフには使用率平均が1%以上のデッキのみを掲載しています。
・2ページ目が生のデータです。こちらには全てのデッキの使用率を掲載しています。
・1/8にミッドレンジハンターと秘策ハンターの使用率が異常な挙動を見せていますが、恐らくHSReplayのデッキ分類ルールが変わったせいと思われます*1

雑感

雑感というか、データから読み取れる要素を拾い上げます。

・圧倒的ハンター環境の幕開け
多くのプレイヤーの予想通り、もともと多かったにもかかわらずナーフから逃れたハンターデッキの使用率が非常に増加しました。もともと多かったスペルハンターに加え、ミッドレンジハンターが大きく使用率を伸ばしました。また、少し間をおいてから秘策ハンターの使用率も増加し、これら3つのデッキタイプは未だに使用率上位争いをしているという状況です。
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太い青がスペルハンター、太い黄色がミッドレンジハンター、太い橙色が秘策ハンターです。

・プリ―ストの台頭
ハンター環境に対して、プリ―ストの使用率も向上しました。一月の半ばあたりはクローンプリ―ストが長い間使用率トップを維持し続けた他、コントロールプリ―ストも中堅上位をキープし続けています。
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太い赤がクローンプリ―スト、太い水色がコントロールプリ―ストです。

・中堅には2つの奇数デッキ
奇数ローグはナーフ適用後ずっと使用率5%前後をキープし続けています。また、奇数パラディンもナーフ後は絶滅寸前まで少なくなりましたが、結局は使用率を戻す結果になりました。
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太い緑が奇数ローグ、太い黄土色が奇数パラディンです。

・使用率を落としたデッキ群
最初期には使用率2位だった断末魔ハンターは緩やかに使用率を落とし続け、使用率上位とは言えない状況になっています。同様に使用率3~4位だったOTKパラディンもひと月で使用率を大きく落としました。12月終盤は使用者の多かった奇数クエストウォリアーも、ピーク時と比べると使用率は低迷しています。
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太い紫が断末魔ハンター、太い紺色がOTKパラディン、太いピンクが奇数クエストウォリアーです。

・一月中盤~終盤にかけて増えたマイナーデッキ
1月の中盤以降、メックトゥーンウォーロック、聖なる怒りパラディン、奇数メイジの3デッキがこの順に不穏な伸びを見せました。
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太い水色がメックトゥーンウォーロック、太い紺色が聖なる怒りパラディン、太い橙色が奇数メイジです。



振り返りは以上です。

②環境予測振り返り

概要

以前行った、「環境予測:天下一ヴドゥ祭(ポストナーフ)」に関して、使用率変遷を踏まえて振り返りを行います。
ta9e2hs.hatenablog.com

本論

環境予測において言及したものに対して順次振り返りを行います。

グラフの右側の方を見ると、多くのデッキ(15~20種類)が0以上の使用率を維持していることが見て取れると思います。
また、縦軸に着目しても、瞬間使用率が最も多い偶数シャーマンでさえ使用率40%を超えないという結果になりました。
これが意味するのは、明確なトップメタが存在せず、多くのデッキにチャンスがある状況であると言えます。

現在7種類のデッキが使用率5%以上を維持していて、使用率10%以上のデッキは存在しません。明確なトップメタが存在せず、群雄割拠の環境であるという予測は的中したと思います。

環境初期は、現在使用率の高いスペルハンター、断末魔ハンター、奇数ローグの3デッキがそのまま使用率を伸ばすと予測できました。
それにワンテンポ遅れますが、OTKパラディン、秘策ハンター、クローンプリ―ストの3デッキも使用率を伸ばすと予測できました。
これらほどの伸びはないものの、偶数パラディンも初期で使用率を伸ばすと予測されます。
一方で、現在使用率が高めの偶数ウォーロック、ミッドレンジハンター、テンポローグは使用率を落とすと予測されました。

スペルハンターと断末魔ハンターはもともと使用率が高かった上に2週間その状態を保ち続けたので、悪くない予測だったと思います。
奇数ローグは実際に環境初期に使用率を伸ばしました。
秘策ハンター、クローンプリ―ストが後追いで伸びるという予測、偶数パラディンの地味な増加予測も的中です。
OTKパラディンに関しては予測で言及したほどの像かはありませんでした。

マイナス側の予測に関しては、偶数ウォーロックとテンポローグは予測通り低迷しました。
一方でミッドレンジハンターは予測に反して使用率が跳ね上がりました。失敗その1です。

初期に流行るこれらのデッキに対して、偶数シャーマンが非常に相性が良く、使用率を増やすと考えます。

失敗その2にして最大の戦犯です。偶数シャーマンは一時期伸びこそしたものの全く流行らなかったので、これ以降の予測はパッパラパーになりました。

偶数シャーマンの流行に伴って、初期に流行るデッキのうち断末魔ハンター、OTKパラディン、偶数パラディン、クローンプリ―ストあたりのデッキは使用率を落とします。
一方で、スペルハンター、奇数ローグ、秘策ハンターはある程度高い使用率を保ち続けると予測できます。
偶数シャーマンが流行した場合、それに対してメックトゥーンウォーロック、奇数クエストウォリアー、キューブロックが使用率を伸ばすと予測できました。
また、これまで流行を経験しつつこの段階でも高い使用率が期待されるデッキは、スペルハンター、断末魔ハンター、秘策ハンター、偶数パラディン、奇数ローグ、偶数シャーマンの6デッキと予測できました。環境で長く戦えると予測できたこれらのデッキは、優先的にクラフトする価値があるかもしれません。

パッパラパー予測ですが、メックトゥーンウォーロック、奇数クエストウォリアー、キューブロックのワンチャン枠に関しては外れてはいないと感じました。
環境で長く戦えると予測したデッキ群は、実際に直近7日の勝率が52%以上あるのでクラフトする価値はあったんじゃないでしょうか。

大流行はしないものの堅実に生き残るデッキ群として、メックトゥーンクエストプリ―スト、奇数ウォリアー、コントロールプリ―ストが挙げられます。

奇数ウォリアーは絶滅危惧種です。メックトゥーンクエストプリ―ストってなんですか。

雑感

※少し細かいモデルの話になったので、興味のある方だけご覧ください。

今回の予測で大きく外れたのは、ミッドレンジハンター(前半)と偶数シャーマンの挙動に関してです。

ミッドレンジハンターに関しては、データ上の勝率はそこまでよくないのに使用率が減らないというよくある現象だったと感じます。
根拠として提示するのに十分なデータを揃えられていませんが、ミッドレンジハンター全盛期の使用率はランクが高くなるほど下がっていました。これはシャダウォックシャーマンにもみられた現象で、当然ですが勝率が低いのでラダーを勝ち抜くのが他のデッキと比べて難しい、ということを示していると思います。
上記の推測通りであれば、この問題はプレイヤーの合理性が限定的であるといった問題に発展するため、モデルの範疇を逸脱します。
予測モデルは予測と銘打ってはいるものの、実際には合理的な行動の結果を示す規範的理論の側面があるので、このタイプの乖離を考慮する意味は薄いと考えます*2

一方で偶数シャーマンが全く流行らなかった問題ですが、過去にこのようなアンケートを取ってみました。

Twitterのアンケートの信憑性の話はここでは控えますが、少なくない数のプレイヤーが「資産がない」という理由で偶数シャーマンを使わないという結果になりました。
偶数シャーマンは要求魔素数が高い上に、現環境で偶数シャーマンでしか使わないようなカードを多数要求されます。それらのカードの多くは他のカードで代替することが難しいものです。こういった要素は、現実的にはプレイヤーが偶数シャーマンの優先順位を下げる要素になっていると考えられます。
これまでの環境に関しても、奇数ウォリアーやコントロールメイジなどには代々こういった現象があてはまるように感じます。

予測に用いているレプリケーターモデルでは、プレイヤーが環境の中にあるデッキをいつでも使用可能であるというそこそこ強い仮定を置いています。しかしながら、多くのプレイヤーにおいて、使用するデッキを決定する上で資産の問題は切っても切り離せません。
つまり、実際には全てのプレイヤーが全てのデッキを使えるわけではないということです。この要素がデッキ相性と同等かそれ以上に働いているのが、偶数シャーマンや奇数ウォリアーなのではないかと考えています。

この問題を加味するためにモデルに追加しなければならない要素は、全てのデッキ間におけるデッキを変えることで必要になる魔素数です。持っているカードで代替できるデッキは使いやすく、多くのカードを作らなければいけないデッキは使いにくいという仕組みを導入する必要があります。
そこまでは理解していますが、そもそもどうやってそれを抽出するか(今のところ可能ではあるが非現実的な時間がかかる)、この要素がどの程度デッキ選択に関わるのか(重要とは言ったがどれほど重要かはわからない)といった面の課題をなかなかクリアできないので、結局今後も従来の予測を行うことになりそうです。

以上です。

*1:当然集計ミスかもしれませんが、他のデッキには何ら異常がないので可能性は低いと考えています

*2:この予測は、例えば「みんな使ってるけど実はよくない選択かもしれない」というような洞察を与えるもの、と考えています